解説

東日本大地震発生から一ヶ月あまり――。 車窓に、瓦礫の山と広漠たる荒野の、灰色の風景が流れてゆく。 一人の映画作家が、尼崎の町医者とともに被災地へ向かっていた。line

そこで出逢ったひとびとは、静かに語りはじめる。一台のカメラが、その声と風景を何度も往復しながら、ただひたすらに素描を重ねていく。監督は、『ただいま それぞれの居場所』で、介護現場のいまと希望を描き、平成22年度文化庁映画賞「文化記録映画大賞」を受賞した大宮浩一。
日付も地名も、人の名も付すことのないこの映画は、未曽有の大地震と津波の跡を、そして、その後もなお続くいとなみを、決して情報に還元することなく、スクリーンに大きく映しだしてゆく――はたして「復興」とは何を意味するのか? 私たちは何処へゆくのか? 映画館の暗闇に、いくつもの問いが、浮かんでは、消えていく。

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「若い人たちは頑張って、なんとか立て直してもらいたいんだけっども。  もうこのザマを見たら……どうするんだろう、これ」 「東北の被災者のあり方が賞賛を浴びたっていうのは、経済原理からいうと  遅れた地域だったわけですよ。だからこそ、守られていたもの。それが、  私は賞賛されているような気がしてしょうがないですね」画像:船画像:女性「ああ、本当に信じられません。ああ、信じられません。  YouTubeで船を見ましたから、ここに来たかった。  本当に信じられません」祖母「だっていつかまた必ずあるでしょ、こういう事が。  だから、あんまり 海の近くには住みたくないね」 孫 「でも、海好きだもん」 「街角にビルが建つと、ここに前何があったかなっていうの、  すぐ忘れるんですよね」画像:鳥居